「あつぎ起業スクール」の受講生との出会い
今から十数年前、知り合いの税理士から一本の電話をもらいました。厚木市が地域経済の活性化や起業促進を目的に2008年度から開催している「あつぎ起業スクール」の受講生に、「自ら事業を立ち上げた初代経営者の生の声を聞かせてあげたい」とのことで、3名の女性の起業希望者を連れて当社を訪ねてきたのです。お一人は飲食業、お一人は生活関連サービス業での起業を希望され、もうお一人は、まだ具体的に何をやりたいかを模索されている段階でした。すでに開業日まで決まっていたお二人に話を聞いてみると、意外なことに、具体的な事業戦略やサービス内容、自社の強みなど、商売を始めるうえで最も大切な部分が、十分に固まっていない状況でした。
「お店をつくること」と「商売をつくること」は違う

一方で、金融機関から融資を受けるための収支予算書や店舗の契約、内装図面、インテリアなどの準備は着々と進んでいました。いわば、商売の「外側」の準備が先行し、肝心の「中身」をこれからつくっていかなければならない状態です。その話を聞いたとき、知り合いの税理士がなぜ彼女たちを私のところへ連れてきたのか、その理由が分かったような気がしました。厚木で商売を始めるのであれば、まず知っておかなければならないのが同業他社の存在です。飲食業でもサービス業でも、競合店がどのような商品やサービスを、どの価格で提供しているのか。接客のレベルはどうか、店舗の特徴は何か、地域にライバルは何社あるのか。そうしたことを分析したうえで、自分が始めようとしている事業が、その市場に参入して本当に勝負できるのかを考える必要があります。しかし、当時のお二人は、そうした市場調査や競合分析にはまだ十分に取り組めていませんでした。店舗をつくり、原価から提供価格を決め、完成予定のインテリアパースを見ながら開業への夢を膨らませている。そんな段階だったのだと思います。
起業より継続
初対面の方々に厳しいことを申し上げるのは心苦しかったのですが、先輩経営者の一人として、事業を始める前に考えておくべきことを率直にお伝えしました。その後、お二人は実際に開業され、それぞれ大変な努力を重ねられたことと思います。そしてうれしいことに、現在もしっかりと事業を継続されています。あれから十数年。今年も「あつぎ起業スクール」が、厚木商工会議所を会場に、8月22日から10月3日まで全6回の日程で開催されます。私も9月19日に神奈川初代会のメンバーとして、これから経営者を目指す皆さんに、私自身の経験を精一杯お伝えする予定です。会社を設立すること自体は、決して難しいことではありません。起業を目指す方は、誰もが夢と希望を持ってスタートします。しかし、事業を長く継続し、成長させていくことは決して容易ではありません。だからこそ、これまで自分自身が経験してきた成功だけでなく、失敗や苦労も含めた「経営の現実」をお伝えすることで、これから起業する一人でも多くの方のお役に立てればと思っています。
代表取締役 藤岡 秀和



